小林隆×東京サンシャインボーイズ

 東京サンシャインボーイズに所属の俳優の経歴と、(個人的な)おすすめ作品、役どころも紹介。第五弾は小林隆。

人物

 1959年8月20日生まれ。1988年『青池さんちの犯罪』からサンシャインボーイズに参加。客演の野仲イサオを除けば劇団の最年長者。三谷が執筆した大河ドラマでは三作とも若者を庇護する心優しい紳士を演じているが、おそらく小林本人の人柄を生かした設定なのだと思う。2011年初演の『国民の映画』以降はまた違う役どころを任されるようになり、知られざる引き出しが次々発見されている。劇団解散以降、非劇団員を含め、最も三谷作品への起用が多い役者だと思われる。

必見作品
『新選組!』(2004年) 井上源三郎役

 三谷幸喜が初めて取り組んだ、新選組局長近藤勇を主役に据えた大河ドラマ。若いメインキャストらが繰り広げる序盤の青春群像劇、中盤の壮絶な内紛からの落日の描きぶりが見事な名作。諸事情によりオンデマンドの配信はないが、DVDで観ることができる。

 小林は試衛館から近藤に連れ添う古参の隊士井上源三郎を演じた。隊士の中では年長で、若い隊士には兄(祖父?)のように優しく、幹部には忠実に、敵方にも冷静に接する。三谷に「東京サンシャインボーイズの良心」と称された小林にあて書きされた役どころ。泣かせる名場面がたくさんあるのだが、個人的には山南敬介に近藤家の下男に間違われたり、浪士組で一人だけ違う隊に振り分けられて拗ねたりする場面が笑えるのでお気に入り。

『国民の映画』(2011年、2014年) フリッツ役

 1941年、ドイツ国内の映画人を集めて一流の名画を作ろうと画策するナチスの宣伝大臣ヨゼフ・ゲッベルスと、映画人たちの一夜を描いた舞台作品。終盤までは映画や芸術を巡る議論、ゲッベルス夫妻のそれぞれのアバンチュールなどが止め処なく、そして華やかに描かれるのだが、終盤は鬱々とした展開に。非人道的な権力者と利害関係を持ってしまった時に人間がどのように振る舞うか、生々しく突きつけられる名作。パルコからDVDが販売されている。

 小林はゲッベルス家の有能な執事であり、映画鑑賞仲間でもあるフリッツを演じた。仕える家への忠心と憎しみを内包した、抑えた演技が光る。『国民の映画』を観た後は『新選組!』や『スオミの話をしよう』を観て、心を落ち着かせつつ小林の引き出しの豊かさに驚くのがお勧めの鑑賞方法である。

出演作品

1988年 舞台『青池さんちの犯罪』(稲薬小次郎)

1989年 舞台『こんな夜の話』、舞台『デラシネ父さんのこと』(坂東志郎)、舞台『天国から北へ3キロ』(乃木平助)、舞台『サンシャインの世界は廻る』、舞台『眠りラクダのはじける音(再演)』(しんちゃんおじさん)

1990年 舞台『東京の冬』、ドラマ『やっぱり猫が好き殺人事件』、舞台『彦馬がゆく』(神田彦馬(写真師))、舞台『12人の優しい日本人』(陪審員4号)、舞台『ブロードウェイの生活』(大熊富夫)

1991年 舞台『12人の優しい日本人(再演)』(陪審員4号)、ドラマ『世にも奇妙な物語 息子帰る』(医師)、舞台『ショウ・マスト・ゴー・オン 幕をおろすな』(栗林淳一)、舞台『天国から北へ3キロ(再演)』(たかちゃん)、舞台『99連隊』(大石良雄)

1992年 ドラマ『君たちがいて僕がいる』、ドラマ『ショウ・マスト・ゴー・オン 幕をおろすな』(木枯(役者・浅野内匠頭))、舞台『なにもそこまで』、舞台『12人の優しい日本人(再々演)』(陪審員3号)、舞台『もはやこれまで』(おせっかいな男)

1993年 ドラマ『振り返れば奴がいる』(患者志村)、舞台『ラヂオの時間』(浜村錠)、舞台『彦馬がゆく(再演)』 (神田彦馬(写真師))

1994年 ドラマ『女ねずみ小僧・狙われたからくり城~史上最悪のダイ・ハード』 フジテレビ、舞台『ショウ・マスト・ゴー・オン 幕をおろすな(再演)』(佐渡島多喜夫(佐渡島守の父)、ドラマ『警部補・古畑任三郎』(向島巡査/2話、3話、12話)、ラジオドラマ『笑の大学』(おでん屋の親父)、舞台『東京サンシャインボーイズの「罠」』(ちんげさん(丹下淳之介))

1996年 ドラマ『古畑任三郎』第2シリーズ(向島巡査/3話、4話、5話、7話、8話、9話)、ドラマ『巡査 今泉慎太郎』(向島巡査/7話、10話)、ドラマ『消えた古畑任三郎』(向島巡査)、ドラマ『竜馬におまかせ!』(吉田松陰/7話)、舞台『巌流島』(蟻田休右衛門)

1997年 ドラマ『総理と呼ばないで』(画伯/1話~3話、6話、7話、9話、11話)

1999年 ドラマ『古畑任三郎 VS SMAP』(向島巡査)、ドラマ『古畑任三郎 黒岩博士の恐怖』(向島巡査)、ドラマ『古畑任三郎』第3シリーズ(向島巡査)

2000年 舞台『オケピ!』(ヴィオラの彼)

2003年 舞台『オケピ!(再演)』(ヴィオラの彼)

2004年 ドラマ『新選組!』(井上源三郎/1話、3話~45話)

2006年 ドラマ『新選組!!』(井上源三郎)、ドラマ『古畑任三郎ファイナル』(向島巡査/1話、2話)

2007年 舞台『恐れを知らぬ川上音二郎一座』(小村寿太郎)

2008年 ドラマ『古畑中学生』(向島巡査)

2009年 舞台『returns』(ユモトコウゾウ)

2011年 舞台『国民の映画』(フリッツ)、映画『ステキな金縛り』(菅仁)、ドラマ『ステキな隠し撮り』(菅原)

2013年 舞台『ロスト・イン・ヨンカーズ』(エディ)

2014年 舞台『国民の映画(再演)』(フリッツ)、ドラマ『おやじの背中 北別府さん、どうぞ』(北別府芳雄)

2015年 ドラマ『オリエント急行殺人事件』(益田悦夫)

2016年 ドラマ『真田丸』(片桐且元/14話~23話、25話~35話、37話、38話、40話、46話、47話、50話)

2018年 ドラマ『風雲児たち〜蘭学革命篇〜』(国松)

2019年 映画『記憶にございません!』(森崎)

2020年 zoom配信『12人の優しい日本人』(陪審員3号)

2022年 ドラマ『鎌倉殿の13人』(三善康信/3話、11話、14話、19話~21話、23話~48話)、舞台『ショウ・マスト・ゴー・オン(再々演)』(万丈目充)

2024年 映画『スオミの話をしよう』(宇賀神守)

2025年 舞台『蒙古が襲来』

その他

 数年前までブログ『小林隆のひとりごと』をやっていたが、現在は閉鎖している。ファンがメッセージを送ると小林がお返事をくれたりする、アットホームなブログだったような記憶がある。